●和敬清寂

令和5年6月掲載

 ※原文は縦書きのため漢数字で表記しております。

 ご存知でしょうか、世界で初めて国際会議において人種差別撤廃を提案した国、それは日本です。全世界が一つの家族のようなもので、差別や植民地などとんでもない、仲良く手を取り合って助け合おうじゃないかと考えての事ではないでしょうか。しかしそれが当時の欧米列強には生意気と映ったのでしょう、これが先の大東亜戦争の遠因であります。
 現憲法第一条に「天皇は日本国民の統合の象徴」とあります。戦後GHQの押し付けた憲法草案では「統合」ではなく「統一」という言葉だったのですが、当時の日本の方々が「統合」に変えたのです。それらの違いはなんでしょうか?

  統一:自国の文化を同じにするため、文化を侵食し変化を強要する
  統合:両者の文化権や国民の自主的な権利には関与しない

 つまり、「統一」では、アメリカが押し付けたものと全く一緒になってしまい、日本の心はなくなってしまうということ。「統合」なら、お互いの違いを認め尊重しあいつつ自主自立している様だということです。
 さて、GHQにより戦後は使用を禁止された「八紘一宇」という言葉があります。八紘とは「全世界」(四方八方や八幡神社の八もそうです)、「宇」とは「家」を表します。つまり「八紘一宇」とは、世界が一つの家のように平和に睦まじく暮らすことを願った日本の言葉です。ジャーナリストの清水芳太郎さんの言葉を借りれば、『一家の秩序は一番強い家長が弱い家族を搾取するのではない。一番強いものが弱いもののために働くのが家である。現在の国際秩序は弱肉強食であり、強い国が力によって無理を通し、弱い国を搾取する。より強い国には媚びて弱い民族を虐げている。世界中で一番強い国が、弱い国や民族のために働ける制度が出来た時、初めて世界が平和になる。』こういった理念をもつ立派な言葉です。
 また、「鬼滅の刃」という漫画の登場人物の一人で、煉獄杏寿郎というとても強い力を持ったキャラクターが出てきます。彼のお母さんが死を間際にしてこう伝える場面があります。
 『なぜ自分が人よりも強く生まれたのかわかりますか?弱き人を助けるためです。生まれついて人よりも多くの才に恵まれた者は、その力を世のため人のために使わねばなりません。天から賜りし力で人を傷つけること、私腹を肥やすことは許されません。弱き人を助けることは強く生まれた者の責務です。責任を持って果たさなければならない使命なのです。決して忘れることなきように。母はもう長く生きられません。強く優しい子の母になれて幸せでした。』
 煉獄杏寿郎は強敵との戦いで主人公たちを守り、命を落としますが、お母さんの遺言通りその力をもってたくさんの人を救いました。強き力を持つ者の使命を表現した場面だと思います。
 日本はこれまでも家族や地域みんなを大切にしてきたことが分かると思いますが今の世はどうでしょうか。
 一昔前と比べ、核家族が増え、近所付き合いが減り、隣人と会ったこともないという方も多い。他にも孤独死が増えたり、老人宅に強盗が押し入ったり、日本人の貧困化に伴った少子化など相まって段々とタテにもヨコにも家族・共同体の繋がりが途絶えていっているように思います。人も動物も植物も同じものは二つとありません。何でもかんでも受け入れることも無いし、すべて拒む必要もありません。みんな違って当然で、それを認めた上で「統合して弱きを助け協力共存」していくことが大切かと存じます。
 佛日寺は日本の寺院として檀家檀信徒みなさんを繋ぐ拠所となれれば幸いと存じます。題名の「和敬清寂(わけいせいじゃく)」とは、「相手を認め、敬うことで、居心地のいい清々しい関係を築ける」と言う茶道の心得です。みなさんでお茶を一杯いかがですか。


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